2021年12月6日(月) に伊豆長岡温泉ミライ会議および一般社団法人伊豆長岡温泉エリアマネジメント主催で地域課題解決プロジェクト型ゼミイベント「 \伊豆長岡温泉ミライ大学 #04/ 大学生が考えるまちづくりと観光 〜伊豆長岡の魅力と可能性を探る〜」 が開催されました。
地域で暮らす人・働く人、出身者、地域外から伊豆長岡温泉に関わりたい皆さまで作り上げるオンラインイベントです。
今回の記事では当日のイベントの様子をお伝えします。
■今回のイベントゲストプロフィール
矢嶋 敏朗
日本大学国際関係学部准教授
<プロフィール>
日本大学国際関係学部准教授。1962年東京都生まれ。1987年㈱日本旅行入社。団体営業、商品企画、国内仕入、カード会社との新規事業、広告会社出向など経験。特に広報を足掛け20年間担当し、広報室長から(一社)日本旅行業協会<JATA>に出向し広報室長と人材育成を担当。JATAで人材育成関連では、業界横断インターンシップや東洋大学との「産学連携サービス経営人材育成事業」などを担当。働きながら、東洋大学大学院 国際地域学研究科 国際観光学専攻修士課程修了(国際観光学修士)。その後、東洋大学国際観光学部などで非常勤講師を経験し、2019年より現職(日本旅行は、勤続31年)。著書は、「旅行業概論」(同友館)、「復興ツーリズム観光学からのメッセージ」(同文館)、「人が活躍するツーリズム産業の価値共創」(成山堂書店/近日発行)、<各共著>など
◾︎伊豆長岡ミライ会議とは?
伊豆長岡温泉ミライ会議は、賑わいのある温泉場通りの再生を目指し、地域や自治体、民間事業者が連携してつくるエリアプラットフォーム(会議体)として設立されました。国土交通省による官民連携まちなか再生推進事業の採択を受け、温泉場の未来ビジョンを策定し、大切な地域資源である温泉を守りながら、地域で暮らし続けられるコミュニティを目指し、「温泉のある暮らし」をテーマに賑わいづくり・まちづくりを進めています。
▼伊豆長岡温泉ミライ会議HP
https://izuspamirai.com/
今回のイベントでは、ゲストに日本大学国際関係学部の矢嶋ゼミの皆様をお招きしました。
矢嶋ゼミは、2020年の「ふじのくに地域・大学コンソーシアム」に参加し、「伊豆の国市の地域資源を活用した周遊プランの作成」を作成。伊豆半島の地形を活かしたE-BIKE周遊を中心に、伊豆の広域周遊で宿泊客を増やしていく取り組みを提案。現在は、社会実験を経て多くの人々が楽しむアクティビティになっています。
今年度は、伊豆の国市市内の観光スポットを巡る周遊バスのラッピングデザインやガイド、伊豆長岡温泉の南山荘や温泉駅を活用した観光案内所でのコンシェルジュ企画などにも積極的に取り組んでいます。今回は矢嶋ゼミの皆さんが、伊豆長岡温泉の毎月恒例の温泉場お散歩市への参加と市内フィールドワークを経て、ゼミのみんなで考えたアイデアを様々な視点でブラッシュアップしていきました。
■矢嶋ゼミの皆さんによる発表「~お散歩市とフィールドワークを踏まえて~」
矢嶋ゼミナールは、日本大学国際関係学部に設置された「観光について学び、結果を出す」ゼミナールです。富士山三島東急ホテルと連携してホテルプランを作成して販売に向けて取り組む2期生。伊豆の国市と連携して「ポストコロナの新しい旅行スタイル」をテーマに二次交通の側面から観光について考える3期生。それぞれが観光について真剣に学び、考えています。
今回は、伊豆の国市での「お散歩市」の見学・体験とフィールドワークを踏まえ、お散歩市班、バスデザイン班、コンシェルジュ班に分かれてそれぞれのテーマ別に「魅力的な部分」と「改善した方が良いと感じた部分」を観光客目線で検討・発表を行ってくださいました。
まずは各班の発表内容を抜粋してご紹介します。
◇お散歩市班
この班では実際に開催されているお散歩市に参加し、地域コミュニティを体感することで魅力的な部分や改善したほうが良いと感じた部分を見つけています。
まず、魅力的な部分では下記のような点が挙げられました。
・多様な年齢層の参加があり、人との交流が盛んな点
・アットホームな雰囲気で、他所からの参加でも不安なく訪れられる点
人との交流が減っていると言われている現代で、こういったアットホームな空気感にはかなりホッとする一面がありますね。
とはいえ、逆に考えるとアットホームさは「地域内でコミュニティが完結してしまっているような空気感」を生んでしまいます。外部からの参加者がより訪れやすい空気感を作り出すことも課題であるというのがお散歩市班の意見でした。
そして大きな改善点として挙げられたのは「通行の安全性」です。
歩行者がどこを歩けばいいのか分からない箇所や、人だかりが出来ているエリアがあるという指摘から、初めてお散歩市に参加した人が安全にイベントを楽しめないという課題が挙がりました。
これはお散歩市の印象に関わる重大な課題です。まずは出店位置の見直しや、来客の多いお店では整理券を活用することで、より安全にイベントが楽しめることができるという意見でした。
◇バスデザイン班
バスデザイン班では実際のフィールドワーク時に感じた「バスのデザインに特別感がない」という観点から「伊豆長岡デザインのラッピングバスを走らせたい」という目標を元に活動しています。
とはいえ、予算やデザインの方向性など壁は様々。今回は目標実現に向け、現状伊豆長岡で走っているラッピングバスに焦点を当て、どういったデザインのバスが必要なのかを考えました。
まず、班として注目したのは「IZUベリーBUS」です。
イチゴ狩りの季節になると走るこのバスは、ピンクや赤色を使った可愛らしいデザインが特徴で女性や子供が乗りたくなる色合いをしています。反対に、可愛らしいデザインということは、そういった雰囲気が苦手な方には不向きであるとも言えます。また、バスの前面はラッピングがされていなことから、中途半端さを感じるという意見も出ました。
続いて注目したのは「歴バスのる〜ら」。
伊豆長岡の歴史的な観光地などの写真がラッピングされたバスは観光地の宣伝にはピッタリに思えます。ラッピングも全面に施されており、デザインに統一感が持てていました。
しかし、ラッピングに使われている色彩が保護色であったり、写真をたくさん使ったことで少しごちゃついた印象を受けたりと、デザインとしての視認性が下がっているという大きな課題があります。
バスを観光地に行くまでの交通手段としてだけでなく、バスそのものを観光資源にすることが必要ではないでしょうか。バスを見て思わず「写真を撮りたい」と感じるデザイン。観光資源になりうるバス。それこそがバスデザイン班が目指す伊豆長岡の新しいラッピングバスといえます。
そこでバスデザイン班が理想としたのが長崎県を走る「角煮まんバス」です。
窓にまで及ぶ大きな角煮まんがラッピングされた車体はインパクトや視認性も抜群で、まさに理想を体現したバスだと感じます。街中で見つけた際に、思わずカメラを構えてしまう。写真を撮って友人に自慢したくなる。そんなデザインのバスは街の観光資源として大きな価値を発揮するでしょう。
ですが、理想のラッピングバスを製作するには高い壁がそびえ立ちます。それこそが前述した費用面での課題です。バスのラッピング費用、掲載時の費用、ラッピングを剥がしてバスを元通りにする費用など、総合すると簡単に進められない費用感です。
伊豆長岡の観光資源を増やすべく、この壁を乗り越えていけるかが、バスデザイン班最大の課題といえるでしょう。
◇コンシェルジュ班
この班では、伊豆長岡の観光コンシェルジュとなるべく活動していますが、道のりは簡単なものではありません。
そもそも観光コンシェルジュとは観光分野においてプロフェッショナルとして、地域の来訪者へニーズにフィットしたおもてなしを行う人のことを指します。コンシェルジュであると名乗るには、それだけの実力を持っている必要がありますが、一朝一夕で身につくものではないことは第1の壁です。
そして続いての壁は、伊豆長岡の知識習得が不十分であるという点です。
コンシェルジュとして活動するには、地域について歴史や観光地、地元の人しか知らないような知識が必要不可欠です。そういった知識を現地の方と交流していくことで、身につけていく必要があります。
コンシェルジュとして活動していきたいという思いは、伊豆長岡の良さを広げたい。発信したいという熱い思いから生まれています。そういった気持ちは、伊豆長岡の話題性を産んでいきたいという目標につながりました。
人気アイドルグループがテレビ番組の企画で使用した旅館の存在をアピールして、ファンへのPRを行う、といった若者世代にフィットするPR戦略は市外に住むからこそ気付ける新たな話題性とも言えるでしょう。
さらに、実際に行ったフィールドワークでは12月10日から開始しているシェアサイクルサービスに試乗する中で、観光地として抱える重要な課題提起をしています。
お散歩市班の発表でも出た「通行時の安全性」です。
シェアサイクルで使用される電動自転車は乗り慣れていない人からすると、未知の乗り物です。初速スピードなどは通常の自転車と変わってくるため、安全に乗りこなすため、練習機会を提供する必要があります。
さらに、実際に自転車が走る道路についても、車と接触する可能性が高いような狭い道があることや、自転車道が分かりづらい箇所がある点について改善の必要性が述べられました。
同時に、自転車で走る中で地図に休憩できるコンビニの位置が記載されていなかったり、道路案内の看板が少なかったりする市外の観光客を意識した課題感についても言及されました。
市外の観光者を増やして伊豆の国市を盛り上げるため、コンシェルジュ班としても技術や知識の取得、実践が求められます。大学生というフレッシュな世代だからこそ気付ける魅力をどんどん発見し、コンシェルジュとしてPRしていくことが、班として大きな目標となるでしょう。
■グループワーク
矢嶋ゼミの皆さんによる発表の後は、参加者全員で3グループに分かれてディスカッションとなりました。
参加した地元の方からは「確かにな……と耳が痛かったです」という感想が。
観光客、そして大学生というフレッシュな目線で感じた意見から、更に伊豆の国市を発展させていきたいという思いが伝わる時間は熱いものとなります。
実際にまちづくりのお仕事に関わった方からは「地元の方と対話を行って、1つずつ着実に小さなことから成功させていくこと。そして対話で想いを伝えていくと良いと思います」という学生の皆さんへメッセージをいただけました。
想いを言葉にすることで、思いがけない方向から成功の鍵を手に入れられることができる。
簡単そうに見えますが、難しいことです。学生ならではのストレートさやフレッシュさを熱い想いとして伝えて、地域の課題に取り組めるコミュニティが組みあがっていく過程をリアルタイムで見ることができた時間でした。
■まとめ
地域の魅力を発見していく活動やプロジェクトは様々ありますが、観光客目線で考えることで「魅力」・「直していくべき部分」を見つけることで、一歩先に進んだ観光客招致を行うことが可能になります。
大学生×観光客という2つの目線から伊豆長岡の魅力と、変えていきたい部分を見ていく本イベントは、さらなる伊豆長岡の魅力発見に繋がっています。
今回のイベントや本記事で伊豆長岡に興味を持った方は、是非現地を訪れてみてください!
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