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大学生、専門家とともに、多様な視点で伊豆長岡温泉のビジョンを描く。伊豆長岡温泉と大学との関わりとは?

伊豆長岡温泉は昔から大学生や中高校生の合宿の宿泊施設として利用され、学生との関わりが多い温泉街です。近年では、ふじのくに地域・大学コンソーシアムやシャレットワークショップなど、大学生と一緒に町の未来や課題解決を考える活動を行っています。将来を担う学生と町の未来を考える活動は、伊豆の国市にどんな未来をもたらしてくれるのでしょうか。今回の記事では、「大学コンソーシアム」と「シャレットワークショップ」の二つの取り組みに焦点を当て、伊豆の国市と大学との関わりについてご紹介いたします。

ふじのくに地域・大学コンソーシアム

ふじのくに地域・大学コンソーシアムの事業「ゼミ学生等地域貢献推進事業」の一環として、各自治体がテーマを指定し、そのテーマに沿って大学の研究室・ゼミが調査を行うという取り組みがあります。2018年、伊豆の国市は「伊豆長岡温泉の再生に向けた地域資源調査」をテーマに公募した結果、日本大学の宮川教授と宮川ゼミの学生が立候補。この研究課題に取り組んだのが、大学コンソーシアムとして最初の活動です。

伊豆の国市はこの取り組みを3年間公募しました。

1年目の2018年は前述の宮川ゼミの学生が提案したSNS発信や観光の企画を実施。

2年目の2019年は静岡芸術大学のデザイン系のゼミからの応募があり、お土産物のパッケージ企画、パッケージ、ロゴデザインなどの提案を実施。

3年目の2020年は日本大学の矢島先生のゼミからの応募があり、「伊豆の国市の地域資源を活用した周遊プランの作成」を行い、伊豆の広域周遊で宿泊客を増やしていく取り組みが企画されました。

伊豆半島は、火山からの贈り物である美しい景観や起伏があり、E-BIKEでの周遊はまさにひとつのアトラクション。運動した後は温泉に入り、美味しいお酒やご飯を食べて、翌日また活動する。伊豆の国市ならではの魅力的な提案でした。

現在はさっそく社会実験を経て実践され、多くの人々が楽しむアクティビティになっています。

シャレットワークショップ

シャレットワークショップは、欧米のまちづくり等で多く用いられているワークショップの形式で、その分野の専門家がそのエリアに短期間集中的に滞在をして都市計画やまちづくりの未来や課題解決について取り組む活動のことです。今回は、都市計画の専門家である横浜国立大学の野原先生と、そのゼミの学生たちとワークショップを実施しました。

「行政主導の都市計画」でもなく、「地域主導のまちづくり」でもなく、多様な立場の視点と、専門家の見地から、地域の実態に合わせた実行力可能なビジョンを描くという狙いがありました。

第1回シャレットワークショップは、2015年、横浜国立大学計画研究室の野原先生(まちづくり、都市計画の専門家)と、「伊豆長岡駅前でシャレットワークショップを実施し、駅前をどう変えてくか考えよう」という企画の立ち上げから開始。4日間にわたり、まち歩き(現地調査)、まちづくりレクチャー、提案思案、成果発表を実施しました。

2019年には同じく横浜国立大学の野原先生が座長となり「シャレットワークショップ2019~温泉駅とその周辺のまちづくりデザインを考える~」を開始。

学生からは病院に来る人、温泉街・病院で働く人、伊豆の国で暮らす人をターゲットとして健康を中心とした憩いの場と食の空間を丸ごと提供する「KENKO-Platform」や、長期休暇にやってくる大学生をターゲットとして伊豆長岡温泉での研修や合宿を提案する「伊豆長岡温泉キャンパス」といった、新しくも面白い案が出されました。

もちろん実際のまちの整備は地権者の合意や行政の予算など多くの課題がありますが、これら大学生を巻き込んだまちづくりの取り組みは全国の他地域同様に国も注目をしてくれています。

今後の取り組みや展望

大学コンソーシアムの取り組みは今年で3年目。現在のテーマでの活動は一旦終了となりますが、来年も新たなテーマで活動を継続していく予定です。例えば、今後はE-BIKE周遊だけでなく、MaaS(マース。ICTを活用してマイカー以外の移動を一括してつなぐ考え)のモビリティサービスとの連携も検討しています。

伊豆半島にはすでに「IZUKO」というMaaSのサービスを運営中ですが、伊豆長岡温泉ミライ会議では日本大学の矢島先生と連携を模索中です。

また、シャレットワークショップは、コロナの関係で大学生の課外活動が禁止となってしまいましたが、大学とアイデアのやりとりをする中で「温泉大学」というコンセプトが生まれました。それが「大学や企業と地域の課題を本気で解決するプロジェクト型ゼミ「伊豆長岡温泉ミライ大学」」の構想に繋がっています。

今後は近隣の大学や地域の中学校・高校と連携し、地域理解や地域のファン作りに繋がる企画や、「30歳の大同窓会」のような地元を離れた人たちが節目となるタイミングで再び地元を訪れる機会を作り、改めて地域の魅力を発見してもらい、最終的に選んでもらえる場所になるようなきっかけづくりもしていきたいと考えています。