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伊豆の国市ウォーカブル社会実験「ほっといずなか2」実施報告 

~エリアマネジメントが拓く「社会変革」への第一歩~ 

伊豆長岡温泉エリアマネジメントは、伊豆の国市、そして若き知恵の源泉である横浜国立大学都市計画研究室の学生たちと連携し、ウォーカブルなまちづくりを目指した社会実験「ほっといずなか2」を、2025年10月12日(日)から10月16日(木)の期間で実施しました。 

伊豆長岡温泉ミライ会議による「100年後も続く温泉場」を目指し、「温泉のある暮らし」を街テーマに官民連携でまちづくり・観光誘客を続ける伊豆長岡温泉地域。 

ここでは観光で訪れる人々だけでなく、地域住民の皆さんや温泉場や市役所などで働く皆さん、特に順天堂大学附属静岡病院で働く関係者の皆さんや通院する皆さんなど、多様な人々がまちに集まり、生活する地域です。昨年に続き実施した今回の社会実験「ほっといずなか2」は、これら多様な人々が暮らす伊豆長岡温泉地域において、単なる地域の町おこしイベントではなく、地域社会の構造を変革しうる、極めて重要なターニングポイントだと確信しています。

 

1. 働きかけたら、社会は必ず変わる。~「人中心」の価値観への転換 

かつてより公共交通の便の良さで伊豆観光の拠点としてにぎわった、伊豆長岡温泉街は、都市整備の進展により、車社会の「車中心」の機能的な空間でした。しかし、エリアマネジメントの役割とは、この既成概念に「人中心」という新しい価値観で働きかけることです。 

今回の「ほっといずなか2」は、その働きかけを具体化するものです。 

  • 10月12日のお散歩市連携: 既存の賑わいを最大限に活かし、ミライ広場やメインストリート「出逢い通り」に設置された仮設のベンチやテーブルは、単なる休憩スペースではありません。それは、「ここで立ち止まっていい」「ここで話をしていい」「ここはみんなの場所である」という、地域への新しいメッセージなのです。 
  • 公共空間の民主化: 道路や広場といった公共空間を、車ではなく、人が歩き、滞在し、交流するための「居間」として開放する。この小さな行動の積み重ねこそが、市民や観光客の回遊性向上経済効果を生み出し、長期的にまちのあり方を根本から変えていく原動力となります。 

2. 今あるもので新しい景色をつくる。~潜在能力の顕在化 

私たちが目指すのは、巨額の投資による再開発ではありません。伊豆長岡温泉街には、湯けむり、歴史的な街並み、そして人々の温かさという、素晴らしい既存資源がすでに存在しています。 

学生たちの柔軟な発想は、まさにこの既存資源の潜在能力を顕在化させてくれました。 

  • 温泉情緒を活かした「滞留空間」: 普段は通り過ぎてしまうだけの場所に、学生がデザインした家具やサインを配置することで、そこが「特別な居場所」に変わりました。それは、昔ながらの温泉街の風情と、新しい時代のデザインセンスが融合した、これまで見たことのない新しい景観です。 
  • 「ほっと」一息つける仕掛け: 実験期間中、訪れた人々が地元の特産品や淹れたてのコーヒーを味わいながら、友人と語らう姿、子どもたちが広場で遊ぶ姿が見られました。この「ほっと一息つける時間」こそが、地域への愛着となり、「また来たい」という強い動機付けになります。 

学生たちのインスタグラム(https://www.instagram.com/p/DPutCv4gUvk/ )に垣間見える、手作り感満載のクリエイティブな活動は、まさに「地域を現場とした生きた学び」であり、彼らが地域の一員として関わり続けることが、伊豆長岡温泉の未来にとって何よりも大きな資産です。 

3. 次のステージへ:持続可能なエリアマネジメントの実現 

今回の社会実験で得られたデータと知見は、伊豆長岡温泉ミライ会議が推進する持続可能なエリアマネジメント活動の確固たる根拠となります。 

  • 計測と評価: どの空間で、どれだけの人が、どれくらいの時間滞在したか。このデータは、単なる感想ではなく、行政や事業者と対話するための「共通言語」となります。 
  • 恒久化へのプロセス: この実験で成功した「居心地の良い空間」を、仮設ではなく、恒久的なまちの資産とするための具体的な計画へと落とし込むことが、私たちの次のミッションです。 

特に、順天堂大学附属静岡病院前の源氏山公園ポケットパーク予定地において、実施された社会実験の知見を、丁寧に整理し、今後の公園整備に活かしていく必要があります。一般社団法人伊豆長岡温泉エリアマネジメントでは、市民、事業者、行政、そして未来を担う学生たちと共に、この小さな働きかけを大きなうねりへと変え、「歩きたくなる、そして住み続けたくなる」魅力あふれるまちを、この伊豆の国市で必ず実現します。今後の取り組みにも、ぜひご期待ください。